医師から棋士へ、棋士から医師へ、あるいは棋士で医師へ

2019/08/19

プロ棋士の坂井秀至8段といえば京都大学医学部を卒業し、医師国家試験に合格しながらもプロ棋士になったということで有名な方です。

先日、新聞やネットニュースで「プロ棋士が医師に」というような見出しで坂井プロが紹介されていましたが、むしろ医師の道に「戻る」ことになった、というほうが正確かもしれません。

いえ、その表現も不正確かもしれません。インタビューで坂井プロは「長期の休場」という表現を使われており、囲碁界への復帰の可能性も示唆されているからです。

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しかし、そもそも医師か棋士かの二者択一でなければいけないのでしょうか。「棋士かつ医師」という選択肢もあって良いのではないでしょうか。

ヤフー・ニュースでは、チェスの世界を引き合いに出し、以下のように伝えています。

以下は2019年8月16日のヤフー・ニュースの記事から抜粋

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チェスの世界では兼業がごく普通

 世界で最も競技人口が多く約5億人といわれる頭脳スポーツ・チェスの世界ではトーナメントだけで生計を立てているトッププレーヤーは少ない。約2億円~数千万の賞金を獲得する世界トップ10以外のグランドマスター(トップ棋士の称号)はチェスの指導者やコーチ、解説者のほか、学者や弁護士、政治家、IT関連の開発者などまったく別の職業についている人もいる。

 1927年に世界チャンピオンになったキューバ伝説のプレーヤー、ホセ・ラウル・カパブランカ(1888~1942年)はキューバ政府から任命を受けた外交官でもあった。

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プロと呼ばれる人たちにも様々な生き方があるのが当然だと思います。

例えばプロテニスプレーヤーであれば、トーナメントの賞金で生計を立てているのは、ほんの少数ということが想像できます。
しかし、テニスコーチとして、普及指導員として、審判として、その他にも「テニス」に関わる生き方は様々だと思います。

プロ野球選手であれば、引退後に監督やコーチなど野球に関する仕事に携われるのは、ほんの一部と言われます。

坂井プロが医師の道に進むというのは、今後のプロ棋士を目指す方にも大いに参考になるのではないでしょうか。

例えば囲碁の研究に集中するために学歴を中卒で終えるのも立派な選択肢です。

しかしまた高校・大学と進学して様々な可能性を広げておく、というのも良いのではないか。

坂井プロのニュースを目にして、改めてそういう思いが湧いてきました。